免許を更新するときの年齢が75歳以上の人は、一般的な高齢者講習のほかに認知機能検査を受ける必要があります。認知機能検査の中には、試験官から提示されたイラストを覚えて後から回答する「手がかり再生」と呼ばれる検査が含まれています。
検査の結果、記憶力や判断力が低下している恐れがあると判断された場合は、臨時適性検査(専門医の診断)の受験や主治医による診断書の提出が必要です。
75歳以上で免許の更新を希望する親を持つ人の中には、手がかり再生を事前に学習する方法がないか模索している人も多いのではないでしょうか。本記事では、認知機能検査の手がかり再生を解説します。
イラストパターンを覚えやすくするコツも併せて解説するので、本記事を読んで手がかり再生をスムーズにクリアできるようにしておきましょう。
目次
75歳以上は高齢者講習前に認知機能検査がある
70歳以上の人が免許を更新する場合、事前に高齢者講習を受ける必要があります。さらに75歳以上になると、高齢者講習の前に認知機能検査を受けなければなりません。
認知機能検査は運転免許の更新満了日の5ヵ月前から受けることが可能です。
ここでは、最初に認知機能検査の基礎知識を解説します。
※ここから紹介する認知機能検査の内容は、2022年5月13日以降に適用されるものです。2022年5月12日以前の制度内容とは異なりますのでご注意ください。
認知機能検査とは
認知機能検査とは、記憶力や判断力を測定する検査のことです。認知機能検査は高齢者講習の前に行われ、結果に応じてその後の流れが変わります。
結果は合格や不合格のような合否判定ではなく、点数に応じて次の2種類に区分されます。点数の区分ごとに、検査後の流れをまとめました。
区分 | 点数 | 検査後の流れ |
認知症のおそれあり | 36点未満 | 記憶力や判断力などの認知機能の低下が疑われるため、専門医の受診が必要になります。
その結果、認知症でないと判定されれば、高齢者講習(2時間)に進みます。高齢者講習を受けた後は通常通り免許が更新でき、運転免許証の交付がされます。 一方で認知症と判定されたときは免許を更新できず、取り消し等となります。 |
認知症のおそれなし | 36点以上 | 認知機能に問題ないため、高齢者講習(2時間)に進みます。高齢者講習を受けた後は通常通り免許が更新でき、新しい運転免許証を受け取れます。 |
認知機能検査から採点、結果の通知までは30分程度になります。また、認知機能検査の対象者には、運転免許証の更新期間が満了する日の6ヵ月前までに各都道府県の警察からハガキが届くので、見落とさないようにしましょう。
認知機能検査についてより詳しく知りたい人はこちらの記事も読んでみてください。
「認知機能検査とは?対象となる人や項目・点数の違いなどを解説」
認知機能検査の内容
次に、認知機能検査の内容を解説します。
検査内容は1種類ではなく、「手がかり再生」と「時間の見当識」の2種類が行われます。
以前は「時計描写」という検査もありましたが、2022年5月に施行された改正道路交通法によりなくなっています。
それぞれの詳しい検査内容は次の通りです。
認知機能検査の種類 | 内容 |
手がかり再生 |
|
時間の見当識 |
|
2種類の認知機能検査の採点が36点以上になると、認知機能は問題ないと判定され、2時間の高齢者講習を受けるだけで免許の更新に進めます。
認知機能検査の出題内容については以下の記事でより詳しく説明しています。
「運転免許の認知機能検査の問題を解説!2022年5月の法改正にも対応」
イラストを記憶する「手がかり再生」とは
認知機能検査は、時間の見当識と手がかり再生の2種類ですが、検査結果は「2.499×手がかり再生の点数+1.336×時間の見当識の点数」の総合点で算出されます。
手がかり再生の点数配分の方が大きいため、特に対策をしておきたいポイントともいえます。
本章では、検査の詳細な内容や流れを詳しく解説するのでしっかり押さえておきましょう。
16枚のイラストを覚える問題
手がかり再生では、試験官から4種類のイラストが描かれたボードが4枚提示されます。イラストの数は合計16枚で、動物や野菜、昆虫などのさまざまなイラストが描かれています。
※イラストのサンプル 画像引用:認知機能検査について|警察庁
検査内容やイラストの種類は全国共通です。そのため、たとえほかの都道府県に転居しても、75歳以上の人は免許を更新するたびに同じ種類のイラストで検査を受けることになります
検査で出題されるイラストや検査用紙は、警察庁の公式ホームページに掲載されているのでチェックしてみてください。
覚えたイラストは、「自由回答」と「手がかり回答」の2段階に分けて回答します。
- 自由回答:ヒントなし
- 手がかり回答:ヒントあり
自由回答では、試験官の質問に対してヒントなしで回答します。一方の手がかり回答は、試験官から与えられたヒントをもとに回答する形です。自由回答のほうが回答に記憶力を必要とするため、手がかり回答よりも点数が高くなります。
手がかり再生の採点基準を表にまとめました。
正答の有無 | 点数 |
自由回答と手がかり回答の両方 | 2点 |
自由回答のみ | 2点 |
手がかり回答のみ | 1点 |
自由回答と手がかり回答の両方で正答できなかった場合は、点数が0点になります。なお、手がかり回答で与えられるヒントはひとつに限られます。
出題と回答の流れ
続いては、手がかり再生の検査の流れを見ていきましょう。
①16枚のイラストを覚える
試験官から検査内容の説明を受けたら、4種類のイラストが描かれたボードを見せられます。
画像引用:認知機能検査について|警察庁
続いて、試験官から「この中に、△△があります。それはどれですか?」といった形で、質問をされるので、「〇〇です」と声に出して回答します。
例えば、「この中に、楽器があります。それはどれですか?」と質問され、「オルガンです」と答えるイメージです。
この調子で、ボードを4枚、イラストは合計16種類提示されるので、一定時間内に覚えます。イラストを覚える時間は、5分程度が目安になります。
②介入問題(試験官の指示した数字に斜線を引く)
イラストを覚えた後は、手がかり再生とは別の課題である「介入問題」を行います。
介入問題では試験官の案内に従って問題用紙を開くと、数字が数多く記載された表が現れます。表中から試験官が指示した特定の数字を探し、斜線で消していく流れです。
介入問題は、手がかり再生の出題から回答までに一定の時間を空けることが目的です。そのため、試験官の指示とは異なる数字を消しても、採点に影響はありません。検査の説明から介入問題が終了するまでの時間は、2分程度が目安になります。
③自由回答(①で記憶したイラストをヒントなしで回答)
介入問題が終わった後は、最初に提示されたイラストを思い出して回答する流れになります。
まずは、事前に覚えたイラストを指導員からのヒントなしで回答します(自由回答)。回答は問題用紙に記載する形で、漢字でもひらがなでも問題ありません。
④手がかり回答(①で記憶したイラストをイラストをヒントありで回答)
指導員から与えられたヒントをもとに覚えたイラストを全て回答します(手がかり回答)。①で試験官が質問した内容がそのままヒントになります。
高齢者教習のイラストパターンを覚えるコツ
最後に、認知機能検査で出題される手がかり再生のイラストパターンを覚えるコツを解説します。イラストのすべてのパターンは警察庁の公式ホームページに掲載されているため、事前に覚えておくと検査での回答がスムーズになります。
イラストパターンを覚えるおもなコツは、次の通りです。
テキストや問題集などの本を購入し練習する
手がかり再生のイラストパターンを覚えるコツのひとつは、テキストや問題集の使用です。全国の書店やオンラインショップでは、認知機能検査向けのテキストや問題集が販売されています。
収録されている内容は、独自の覚え方のコツや例題などさまざまです。問題が収録されたテキストや問題集を使用すれば、認知機能検査の模擬検査が行えます。また、費用をかけたくない場合は、インターネット上で入手できるイラストや解答用紙を使用するのもひとつの手です。
以下の記事では認知機能検査向けの問題集について詳しく解説しています。
「運転免許の認知機能検査の最新おすすめ問題集5選!1発で合格しよう」
YouTubeなどの動画を活用して練習する
イラストを見ながら自分で覚えるのが苦手な場合は、YouTubeなどの動画を活用して練習するのも選択肢のひとつです。YouTube上には、手がかり再生で提示されるイラストを覚えるコツや模擬試験をアップしている人もいます。
解説付きの動画も多く、テレビを視る感覚でイラストを覚えることが可能です。また、YouTubeはスマホやタブレットでも閲覧できるため、場所を問わず利用できる点がメリットです。
イラストを語呂合わせで覚える
実際の手がかり検査で覚えるイラストの数は16種類ですが、全てを覚えるのは若い人でも難しいとされています。イラストを覚えやすくする方法の一つに「イラストの語呂合わせ」があります。
インターネット上には、覚えやすいイラストの語呂合わせを紹介している人も多くいるため、覚えやすいものを探すと良いでしょう。また、自分でオリジナルの語呂を作って覚えるのもよいでしょう。
4枚のイラストを関連付けて覚える
手がかり再生のイラストを覚える際に、4枚のイラストを何かに関連付け覚えてみましょう。たとえばブドウ、レモン、メロン、パイナップルの場合、「小」から「大」の順で大きさに関連付けると覚えやすくなります。
テントウムシ、ライオン、タケノコ、フライパンの場合は、「フライパンでタケノコを炒めてライオンが食べているのをテントウムシが見ている」のように、頭の中で状態をイメージするのもひとつの手です。
認知機能検査を予行練習しておこう
最後に本記事の内容をおさらいしましょう。
75歳以上で免許の更新を希望する人は、高齢者講習を受ける前に認知機能検査が行われます。認知機能検査で行われるのは、手がかり再生と時間の見当識の2種類です。
手がかり再生は16枚のイラストを覚える必要があり、ほかの検査に比べて点数配分が高めに設定されています。可能であれば事前にしっかりと対策をして、スムーズに検査を受けられるようにしておきましょう。