高齢者講習に不合格はあるのか、不安に感じていませんか。結論から先に述べると、高齢者講習に合格・不合格はありません。
ただし、高齢者講習に不合格がないからと油断するのはおすすめしません。
令和2年に公布された改正道路交通法により認知検査機能や運転技能検査などいくつか制度が変更されます。それに伴い、認知機能が低下している恐れがある人や、75歳以上で一定の交通違反歴がある人は免許更新ができない可能性もあります。
改正道路交通法による新しい制度は2022年5月13日より適用となっています。
この記事では、初めて高齢者講習を受ける方に向けて、高齢者講習の合否や高齢者講習の対象者、一般的な高齢者講習の種類と内容、受けるための手続き・必要書類などを取り上げます。
また、2022年5月よりどのように制度が変わるのか、どのケースで免許の更新ができないのかも解説します。
本記事を読むことで、高齢者講習の全貌を把握でき、スムーズに免許の更新に臨めるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
目次
- 高齢者講習に合格・不合格はない
- 高齢者講習で合否判定がない理由とは
- 問題があった場合は指導員からのアドバイスを受ける
- 高齢者講習の対象となる人とは
- 70歳以上の運転免許更新希望者
- 75歳以上の場合は認知機能検査も必要
- 認知機能検査の点数が悪かったらどうなる?点数ごとに解説
- 認知機能検査で36点以上なら2時間の高齢者講習を受講
- 認知機能検査で36点未満なら医師の診断が必要
- 一般的な高齢者講習の種類と内容
- 高齢者講習
- シニア運転者講習
- 高齢者講習を受けるための手続きと必要書類
- 高齢者講習は予約が必要
- 高齢者講習の申し込みに必要な書類
- 万が一高齢者講習の対象期間外となってしまったら
- 2022年5月から違反歴がある人の実車試験が義務化
- 75歳以上・違反歴がある人は運転技能検査が義務に
- 不合格の場合は免許の更新ができない
- 無事故無違反の高齢者ドライバーを目指そう
高齢者講習に合格・不合格はない
冒頭で述べたように、高齢者講習には、合格・不合格はありませんが、それはなぜなのでしょうか。
まずは講習に合否判定がない理由から見ていきましょう。
高齢者講習で合否判定がない理由とは
高齢者講習で合格・不合格の判定がない理由は、公安委員会(警察)が行う適性検査ではないためです。
公安委員会が実施する適正検査では、道路交通法などの基準に基づいた合否判定が出されます。しかし高齢者講習の場合、委託業務として教習所の指導員が実施します。そのため合否の法的根拠がないことから合否判定は出されません。
つまり、公安委員会ではなく教習所の指導員が講習を実施するため、合格・不合格の判定がないのです。
問題があった場合は指導員からのアドバイスを受ける
高齢者講習では合否の判定がないものの、問題があった場合は指導員から指導を受けることがあります。
そのため、スムーズに高齢者講習を受けるためには、事前に講習の内容を把握することが大切です。次の章からは、高齢者講習の対象者や講習内容などを詳しく見ていきましょう。
※ここから紹介する高齢者講習や認知機能検査の内容は、2022年5月13日以降に適用されるものです。2022年5月12日以前の制度や検査内容とは異なりますのでご注意ください。
高齢者講習の対象となる人とは
※画像引用:兵庫県警察-交通関係|70歳以上の方へ(道路交通法の改正について)
高齢者講習の対象となる人は、70歳以上の運転免許更新希望者です。75歳以上の場合、認知機能検査も必要となります。ここでは、詳しく高齢者講習の対象となる人を紹介します。
70歳以上の運転免許更新希望者
高齢者講習は、70歳以上の運転免許更新希望者を対象にしています。厳密には、免許証有効期間が満了する日の直前の誕生日が70歳以上の人であり、免許証有効期間が満了する前の6ヶ月以内に受講しなければなりません。
また高齢者講習は、1998年に義務付けられた安全運転を続けるために必要な講習であり、高齢者講習を拒否した場合は免許の更新はできません。
75歳以上の場合は認知機能検査も必要
免許更新期間の満了日の年齢が75歳以上の場合は、高齢者講習の前に「認知機能検査」を受ける必要があります。
認知機能検査とは、認知力が問題なく機能しているかを確認するテストであり、次のような問題が出されます。
- 16枚のイラストを記憶し、後で思い出して回答するテスト
- 検査時の年月日、曜日、時間を回答するテスト
認知機能検査は、検査手数料として1,050円がかかります。
認知機能検査についてより詳しく知りたい人はこちらの記事もおすすめです。
「認知機能検査とは?対象となる人や項目・点数の違いなどを解説」
認知機能検査に合格するコツについて知りたい人は以下の記事も参考になります。
「高齢者講習前の認知機能検査のイラストの覚え方!出題の流れも解説」
認知機能検査の点数が悪かったらどうなる?点数ごとに解説
ここでは、75歳以上の人が受講する認知機能検査について、より詳しく見ていきます。
認知機能検査の点数が低かった場合、認知力が落ちているとみなされ、場合によっては医師の診断が必要になります。
以下の表で、検査の点数によってどのようなことが変わるのかをまとめました。
点数 | 認知機能の低下に関する診断 | 検査後に行うこと |
36点以上 | 認知症のおそれなし |
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36点未満 | 認知症のおそれあり |
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認知機能検査で36点以上なら2時間の高齢者講習を受講
認知機能検査の結果、採点が36点以上だった場合は「認知症のおそれなし」と判断され、2時間の高齢者講習を受講します。
講習内容と受講料の詳細は、次の通りです。
- 座学・運転適性検査:60分
- 実車:60分
- 受講料:6,450円
認知機能検査で36点未満なら医師の診断が必要
認知機能検査が36点未満だった場合は「認知症のおそれあり」と判断され、医師の診断を受け診断書を公安委員会に提出しなければなりません。
受診の結果「認知症でない」と診断された場合は、高齢者講習を受講すれば、運転免許を更新できます。ただし「認知症である」と診断された場合、高齢者講習の受講はできず、運転免許の取り消しなどの処分を受けることになります。
参考:認知機能検査と高齢者講習(75歳以上の方の免許更新) 警視庁
一般的な高齢者講習の種類と内容
高齢ドライバー向けの講習には、高齢者講習のほかに、シニア運転者講習などもあります。それぞれについて詳しく解説します。
高齢者講習
高齢者講習は、上記で紹介した高齢者ドライバーが免許更新時に受ける一般的な講習です。座学、運転適性検査、実車で構成されており、所要時間はおよそ2時間です。
また次のように、免許の種類によっても、講習時間と受講料が異なります。
免許の種類 | 所要時間 | 内容 | 受講料 |
普通免許 |
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上記以外の免許(原付、二輪、大特、小特) |
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高齢者講習の内容や受講の流れに関してより詳しく知りたい人はこちらの記事も読んでみてください。
「高齢者講習とは?講習内容や受講から免許更新の流れまで徹底解説!」
シニア運転者講習
シニア運転者講習は、「運転免許取得者教育の認定に関する規則」に基づく講習であり、おもに教習所で実施されます。
居住地以外でも受講可能で、その内容は高齢者講習と同一です。
居住地以外で高齢者講習を受けたい場合は、受講先の免許センターなどに問い合わせましょう。
高齢者講習を受けるための手続きと必要書類
高齢者講習を受講するためには、事前予約と書類の準備が必要です。ここでは、詳しく高齢者講習を受けるための手続きと必要書類を見ていきましょう。
高齢者講習は予約が必要
高齢者講習は一般的な免許更新とは異なり、事前予約が必須です。
高齢者講習の案内ハガキは、免許更新期間の満了日の190日前に届きます。そこに電話番号や所在地が記載されているため、希望する場所に電話、または来所して予約しましょう。また、はがきが届いてから予約するようにしてください。
高齢者講習の申し込みに必要な書類
高齢者講習には、次の持ちものが必要です。
- 「講習のお知らせ」はがき
- 運転免許証
- 受講手数料
- 筆記用具
当日は実車があるため、運転に適した服装と履物がおすすめです。また、運転に眼鏡やコンタクトレンズが必要な場合は、忘れずに持っていきましょう。
万が一高齢者講習の対象期間外となってしまったら
高齢者講習の対象期間外であっても、免許証の有効期間内であれば、免許を更新することは可能です。
期限が切れた日から6ヶ月以内であれば、試験場で新規受験として受理されます。認知機能検査と高齢者講習を受講することで、学科・技能試験は免除され、適正検査のみで旧免許証を交付してもらえます。
また、入院などやむを得ない理由がある場合、3年以内ならば理由が終わってから1ヶ月以内に試験場で新規受験として受理されます。
いずれにしても、忘れていた場合はなるべく早く手続きすることが大切です。
2022年5月から違反歴がある人の実車試験が義務化
冒頭でも触れましたが、2022年5月から、特定の違反歴のある75歳以上のドライバーを対象に、実車試験(運転技能検査)が義務化されます。
この試験には合否判定があり、不合格の場合は運転免許を更新できません。ここでは、義務化される運転技能検査について詳しく紹介します。
75歳以上・違反歴がある人は運転技能検査が義務に
昨今、高齢者ドライバーによる事故が問題視され、2022年5月から75歳以上かつ違反歴のあるドライバーは、運転技能検査が義務となります。
厳密には、誕生日の160日前までの過去3年間に違反行為をした人を対象にしています。違反行為は、次の11種類です。
- 信号無視
- 通行区分違反
- 通行帯違反等
- 速度超過
- 横断等禁止違反
- 踏切不停止等・遮断踏切立入り
- 交差点右左折方法違反等
- 交差点安全進行義務違反
- 横断歩行者妨害等
- 安全運転義務違反
- 携帯電話使用等
これらの違反行為をした75歳以上のドライバーは、運転技能検査を受ける必要があります。
参考:兵庫県警察-交通関係|70歳以上の方へ(道路交通法の改正について)
不合格の場合は免許の更新ができない
高齢者講習と違い、運転技能検査には合否判定があり、不合格の場合は免許を更新できません。運転技能検査の内容は次の通りです。
- 指示速度による走行
- 一時停止
- 右折・左折
- 信号通過
- 段差乗り上げ
合格ラインは免許の種類により異なり、第一種免許の場合は70点、第二種免許の場合は80点が合格ラインとなります。
また、更新期間中は何度も受験でき、合格したあとに認知機能検査と高齢者講習を受けることで、免許更新が可能です。かつてよりも厳しい基準が設けられ、簡単に免許を更新できなくなったと認識しておきましょう。
運転技能検査についてより詳しく知りたい人向けに、以下の記事で詳しく解説しています。
「高齢者講習の前に受ける運転技能検査とは?対象者や課題の内容をわかりやすく解説」
無事故無違反の高齢者ドライバーを目指そう
最後に、本記事の内容をおさらいしましょう。
高齢者講習に合格・不合格はありませんが、問題があった場合、指導員からのアドバイスを受ける必要があります。
75歳以上の場合は認知機能検査も必要になり、合計点数によって、高齢者講習の内容が決まります。また認知機能検査の結果次第では、免許を更新できません。
さらに2022年5月から、特定の違反歴のある75歳以上のドライバーを対象に、運転技能検査が義務化され、こちらには合格・不合格があります。更新期間中は何度も受験できますが、不合格の場合、免許を更新できません。合格ラインは、第一種免許の場合は70点、第二種免許の場合は80点です。
違反してしまうと高齢者講習の他に運転技能検査を受ける必要があるため、無事故無違反の高齢者ドライバーを目指しましょう。