大型特殊免許とは、クレーン車やトラクターなどを運転できる免許です。本記事では、大型特殊免許で運転できる車の特徴や免許の取得条件、取得費用などを詳しく紹介します。
大型特殊免許の試験の難易度や免許取得までの流れも解説するので、大型特殊免許を取得したい人はぜひ参考にしてください。
目次
大型特殊免許とは
大型特殊免許は、クレーン車やショベルカー、トラクターなど特定の作業をするための車両を、公道で走行するための免許です。
普通免許と同様に一種と二種があり、一種は公道を運転するための免許、二種は営利目的で賃金をもらって旅客などを運送する場合に必要となります。
大型特殊免許の場合、二種が必要となる車両が現在日本にはありません。そのため、仕事で二種を必要とするケースもなく、ほとんどの場合一種免許を取得します。
大型特殊免許の取得条件
大型特殊免許を取得する際に必要な条件を紹介します。求められる年齢や視力、聴力は次の通りです。
- 18歳以上
- 視力が両眼で0.7以上、かつ、一眼でそれぞれ0.3以上であること
- 10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえること
それぞれ詳しく解説します。
年齢
運転経歴は必要なく、18歳以上であれば取得可能です。ただし、過去に取消処分等(初心取消を除く)を受けている場合は、受験日の1年以内に取消処分者講習を受講し、かつ、欠格期間経過後でなければ受験できません。
視力
視力は両眼で0.7以上、一眼がそれぞれ0.3以上あることが必要です。また、色彩識別能力として、「赤・青・黄」の信号機の色を識別できなくてはなりません。
一眼の視力が0.3に満たない場合や一眼が見えない場合は、他眼の視野が左右150度以上あり、視力が0.7以上であれば取得可能です。
聴力
両耳の聴力として、10メートルの距離で90デシベルの警報器の音が聞こえることが必要です。このとき、補聴器も使用できます。
適性試験ではこの他に運動能力の検査もおこなわれます。これは自動車等の安全な運転に必要な認知またはハンドルその他の装置を随意に操作できるかどうかを調べる検査です。自動車の運転に支障をおよぼす身体障害がないこと、障害がある場合は補助手段を講ずることにより支障がないことを確認します。
大型特殊免許で乗れる車両の特徴
大型特殊免許で乗れるのはどのような車なのでしょうか。運転できる車の種類と特徴を解説します。
車両の種類と用途
大型特殊免許で運転できる車両は次の条件を満たす大型特殊車両です。
- 全長:12.0m以下
- 全幅:2.5m以下
- 全高:3.8m以下
- 総排気量:制限なし
- 最高速度:制限なし(※時速49km/h以下の自主規制有)
大型特殊免許で運転できる、具体的な大型特殊車両の種類と用途は次の通りです。
車両の種類 | おもな用途 |
クレーン車 | 工事・建設 |
ショベルカー | 工事・建設 |
ロードローラー | 工事・建設 |
除雪車・路面清掃車 | 路面整備 |
大型トラクター・大型コンバイン | 農耕作業 |
特殊車両の免許には大型と小型がありますが、小型特殊免許の場合、運転できるのは時速15kmを超える速度を出すことができない車両に限られ、全長4.70m・全幅1.70m・全高2.00m・総排気量1500cc以下の特殊車両です。
小型特殊免許ではフォークリフトやターレット、小型のトラクター・コンバインなどが運転できます。
作業には別の免許が必要になる
大型特殊免許は、大型特殊車両を運転して公道を走行させられる免許です。特殊車両で実際に作業をするためには別途資格や講習が必要になるケースもあります。
【大型特殊車両の種類別】作業のための資格・講習
実際に特殊車両を使って作業するための資格や講習が必要な車両は次の通りです。
車両の種類 | 作業に必要な資格・講習 |
フォークリフト | フォークリフト運転技能講習 1トン未満:フォークリフト運転特別教育修了証 1トン以上:フォークリフト運転技能講習修了証 |
ショベルローダー | ショベルローダー等運転技能講習 |
ブルドーザー | 車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・詰込み用及び掘削用) |
クレーン車 | 玉掛け業務特別教育 玉掛け業務技能講習 移動式クレーン運転特別教育 小型移動式クレーン運転技能講 移動式クレーン運転士免許 クレーン運転特別教育 床上操作式クレーン運転技能講 クレーン・デリック運転士免許 など※作業内容によって異なる |
大型特殊免許を取得する3つの方法
大型特殊免許を取得するには、次の3つの方法があります。
- 教習所に通学する
- 教習所の合宿免許に参加する
- 一発試験を受ける
それぞれの方法を詳しく解説します。
1.教習所に通学する
教習所に通学し、指定時間数の教習と検定を受けて卒業した後、運転免許センターで学科試験を受ける方法です。
普通自動車免許の有無によって、次のように費用や教習時間が異なります。
【普通免許なし】
- 教習時間:学科22時間、技能12時間
- 費用:約16~17万円
【普通免許あり】
- 教習時間:技能のみ最短6時間(学科免除)
- 費用:約8~9万円
免許取得までの日数や費用は教習所によっても異なるため、教習所のホームページや資料で確認してください。
なお、教習にかけられる期間には定めがあります。普通自動車免許は9ヶ月間ですが、大型特殊免許は3ヶ月間であるため、教習を開始したら早めに試験合格を目指しましょう。
2.教習所の合宿免許に参加する
合宿免許は、宿泊施設に滞在しながら教習所の決めたスケジュールに従い、短期間で免許取得を目指すコースです。短期集中型で、通学するより早く免許が取得できます。
通学の場合と同様、普通免許の有無によって教習時間と料金が異なります。普通免許を持っていれば最短4日間で10万円程度、持っていない場合は最短6日間となり、普通免許を持っていない場合の料金は記載のないところが多いため、教習所へ問い合わせて直接確認しましょう。
3.一発試験を受ける
一発試験とは、教習所を利用せずに直接運転免許センターへ行き、学科や技能の試験を受ける方法です。
一発試験を受ける場合に費用は6,100円で、内訳は次の通りです。
- 受験料2,600円
- 試験車使用料1,450円
- 免許証交付料2,050円
万が一不合格となった場合には合格するまで再受験が可能ですが、受験するたびに受験料・試験車使用料がかかります。
大型特殊免許を取得する一連の流れ
大型特殊免許を取得する場合の流れは次の通りです。
- 適性試験
- 学科試験
- 技能試験
上記の順番で試験に合格した後、免許証が交付されます。それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。
1.適性試験を受ける
住んでいる地域の運転免許センターで適性試験を受けます。運転免許センターによっては受験の際に事前予約が必要なケースもあるため確認しておきましょう。
適性検査の際は、視力補正器具や補聴器の使用が可能です。眼鏡やコンタクトレンズ、補聴器などを使用する場合は忘れずに持参します。
2.学科試験を受ける
適性検査に合格したら、次は学科試験を受けます。文章問題90問とイラスト問題5問を解き、100点満点中90点以上で合格です。
普通免許・二輪免許・準中型免許・大型免許・第二種免許を取得していれば、学科試験は免除されます。
3.技能試験を受ける
最後は技能試験ですが、教習所を利用する場合は教習所で技能検定を受けて卒業するため、運転免許センターでの技能試験はおこなわれません。この場合は教習所が発行した「卒業証明書」を提出します。
教習所を利用しない場合は技能試験を受験します。技能試験は減点方式でおこなわれ、終了時に70%以上の点数が残っていれば合格です。蛇行していないか・所定の位置に停止できているかなどをチェックされます。
大型特殊免許取得前に確認しておきたいこと
大型特殊免許を取得する際、事前に押さえておきたいポイントを紹介します。教育訓練給付金制度を利用する方法や試験の難易度、教習所の選び方などを見ていきましょう。
取得費用を節約する方法
大型特殊免許を取得する際、「教育訓練給付金制度」を利用すれば節約できます。
教育訓練給付金制度とは、規定条件を満たす雇用保険の被保険者(または被保険者であった離職者)が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合、教育訓練施設に支払った費用の一定割合相当額(上限あり)を、ハローワーク(公共職業安定所)から支給してもらえる制度です。
支給額は給付対象額の20%に相当する額で、10万円が限度となります。なお、利用条件は雇用保険の加入者であることです。それに加えて、初めて制度を利用する場合は加入期間が1年以上、2回目以降の利用となる場合は加入期間が3年以上あることが必要です。
大型特殊免許の取得難易度
大型特殊免許(一種)の2021年度の合格率は86.1%(※)であり、しっかり対策しておけば難しい試験ではないと考えられます。
しかし、大型の特殊車両を運転するため、一発試験のみで取得しようとすると、慣れない運転で技能試験に合格できない可能性もあるでしょう。教習所で大型特殊車両を実際に運転して練習しておけば、いざ仕事で運転する際にも安心です。
利用におすすめな教習所の特徴
教習所を選ぶ際には、通学のしやすさや費用などを比較して選ぶと良いでしょう。合宿免許であれば、宿泊先で選ぶのもおすすめです。例えば観光名所やレジャー施設などが近い合宿先であれば、教習の合間に楽しめます。
ただし、教習所によっては大型特殊免許の取り扱いがないところもあるので、ホームページや資料などで確認しておきましょう。
条件をクリアして大型特殊免許を取得しよう
大型特殊免許を取得すれば、ショベルカーやクレーン車、ロードローラーなどの工事・建設に使われる車両や、路面清掃車や大型トラクター・コンバインなどが運転できます。
免許を取得するには、18歳以上で視力・聴力・運動能力の条件を満たしている必要があります。「教習所へ通学する」「教習所の合宿免許に参加する」「一発試験を受ける」の3つの方法で取得できるため、自分に合った方法で免許取得を目指しましょう。
試験は適性試験・学科試験・技能試験があり、難易度はそれほど高くありません。ただし、大型の特殊車両を運転するため、しっかり練習しておかなければ技能試験で不合格となる可能性もあります。
実際に大型特殊車両で運転練習をして免許を取得するためには、大型特殊免許対応の教習所を利用するのがおすすめです。教育訓練給付金制度も利用できるため、対象となる方は申請し、費用を抑えて大型特殊免許を取得しましょう。
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