準中型免許の取得を目指そうにも「取得費用がどれくらいかかるのか」「安く済ませるにはどうしたら良いか」と気になり、なかなか取得に向けて動き出せない人もいるのではないでしょうか。
2017年の道路交通法改正により新設された準中型免許は、2トントラックなどを運転できるようになるため、仕事の幅を増やせる免許の一つです。取得費用や期間は取得済み免許と取得方法によって、数千円から40万円以上と大きく変わります。
本記事では、準中型免許の取得費用について、免許なしの場合や免許ありの場合などパターンに分けて紹介します。取得費用を安くおさえる方法についても解説するので、本記事を参考に準中型免許を取得する準備を進めてみてください。
準中型免許とは
2017年3月11日に道路交通法の改正によりできた、新しい運転免許の区分です。簡単に言うと、従来は中型免許で許可していた車両の一部が運転可能となり、取得することで普通免許に比べてより多くの車種を運転できるようになります。
準中型免許でポイントとなるのが、2017年3月11日以前に普通免許を取得していた場合です。法改正が行われる前、普通免許を取得すると車両総重量5トン未満、最大積載量3トン未満、乗車定員10人以下の車を運転できるようになっていました。しかし法改正後の普通免許は、車両総積載量は3.5トン未満、最大積載量は2トン未満となっています。
そこで、改正以前に普通免許を取得していた場合は「車両総重量5トン未満、最大積載量3トン未満までの運転が可能な準中型5トン限定免許とする」という決まりが設けられました。
つまり、普通免許を2017年3月11日以前に取得した人は、5トン以上7.5トン未満の準中型自動車の運転を可能とする限定解除という手続きが必要となります。後ほど詳しく説明しますが、自動車教習所へ通う方法と、運転免許試験場(運転免許センター)で試験を直接受ける方法の2種類から限定解除が可能です。
準中型免許ができた背景
準中型免許ができた背景は複数あります。
貨物自動車の交通事故削減のため
法改正以前は、普通免許を取得すると車両総重量5トン未満、最大積載量3トン未満、乗車定員10人以下の車を運転できました。ですが自動車教習所へ通ったとしても、普通車の教習のみ受けるため、急に経験のないトラックの運転をした場合、事故につながりかねません。
準中型免許を新設し、普通免許で運転できる自動車の範囲を狭くすることで、適切な知識を持ったドライバーが増え、結果として交通事故削減の効果があると期待されています。
物流業界の深刻な人材不足の解消のため
物流業界では、最大積載量3トン以上のトラックの運転を求めるケースが多くあります。しかし、中型免許は取得時に20歳を超えており、運転経歴は2年以上あることが条件です。取得に時間がかかるため、物流業界ではすでに免許を持っている経験者を採用する傾向が強く、ドライバーの高齢化が問題となっています。
準中型免許は取得時の年齢制限が満18歳、車両総重量3.5トン以上7.5トン未満、最大積載量2トン以上4.5トン未満の車が運転できます。自動車教習所で運転技術も学ぶため、従来よりもスムーズに物流業界で働けるようになると考えられています。
準中型免許で運転できる車両の種類
運転できる自動車は、以下の条件に該当する準中型車です。
項目 | 数値 |
車両総重量 | 7.5トン未満 |
最大積載量 | 4.5トン未満 |
乗車定員 | 10人以下 |
視力・深視力 | あり |
運転できる車両 | 3トン |
取得に必要な運転経歴 | なし |
※参考:警視庁「準中型自動車・準中型免許の新設について」
具体例として、街中で荷物を運ぶ2トントラックやゴミ収集車として使われるバッカー車、引越し業者が使うような箱型の荷台が付いたトラックなどが挙げられます。
くわえて、普通自動車や小型特殊自動車、原動機付自転車(原付)も運転できるようになります。
準中型免許の取得条件
年齢は、満18歳以上であることが条件です。なお、教習所へ入校できる年齢については、修了検定時(仮免許試験時)に18歳になる人であれば、17歳も対象となる場合もあるため、教習所に確認しておきましょう。
あわせて、安全に自動車を運転できるか検査する適性試験に合格する必要があります。
- 両眼で0.8以上、片眼それぞれが0.5以上(眼鏡やコンタクトレンズ可)
- 深視力は2.5メートルの距離で平均誤差2.0センチメートル以内(眼鏡やコンタクトレンズ可)
- 赤・青・黄の3食が識別できる
- 10メートルの距離で90デシベルの警報器の音が聞こえる(補聴器可)
- 運転に支障をおよぼす身体障害がないこと
深視力とは、物体を見た時の奥行きや距離感を把握する能力を測る検査項目です。普通免許の取得時には測らない項目であり、すでに普通免許を取得している人であっても確認されます。
運転に支障をきたす可能性がある障害や持病がある場合は、居住地の運転免許試験場にある、安全運転相談窓口にてあらかじめ相談しておきましょう。一定の条件を付けることで補える場合や、補助器具の使用により免許が取得できる場合などがあるためです。
準中型免許を取得する際の費用相場
取得済みの免許により、取得費用の相場が変わります。取得済み免許に応じて、自動車教習所で受講が必要な技能教習や学科教習の数が変わるからです。ここでは、普通免許を取得している場合とそうでない場合による費用相場の違いを解説します。
【普通免許を取得している場合】7〜12万円程度
方法は2つあり、そのどちらを選ぶかによって費用が変わります。
- 自動車教習所で試験を受けてから運転免許試験場(運転免許センター)にて限定解除を行う方法
- 運転免許試験場で試験へ申し込み、合格したら手数料を支払って限定解除審査を受ける方法
自動車教習所に通う場合
普通免許を法改正前に取得していた場合、改正後は5トン限定準中型免許という扱いになります。つまり、必要なのは5トン限定という限定条件の解除を目指す自動車教習所のコースに通い、限定解除を目指す、という一連の手続きです。
この時、教習費用は普通免許(MT)なら7万円前後、AT限定であれば10万円から12万円ほどかかります。
また、法改正が行われた2017年3月12日以降に普通免許を取得している人は、MTなら15万円ほど、AT限定の場合は15万円から20万円ほど必要です。法改正前に普通免許を取得していた人に比べると、より多くの技能教習を受ける必要があり、その分だけ費用が高くなっています。
一発試験の場合
一発試験は、運転免許試験場で技能試験と適性試験を直接受け、限定解除を目指す方法です。受験料と試験車使用料を合わせて、2,850円かかります。教習所へ通う方法と比較すると、一度で試験に合格できれば、準中型免許をもっとも安く取得できる方法です。
ただし、試験に不合格となると、その都度受験料の1,400円と試験車使用料の1,450円を支払い再試験を受けなくてはなりません。限定解除を行うこと
が目的であれば、より確実な自動車教習所を使った方法がおすすめです。
【普通免許を取得していない場合】35〜45万円程度
自動車教習所へ通い、準中型免許の取得を目指す場合は、40万円前後かかります。学科教習を受ける必要もある他、技能教習もより多くの時間こなさなくてはならないからです。
自動車教習所の指定する宿泊施設へ泊まり、短期間で取得を目指す合宿免許を選ぶ場合は、35万円から45万円ほどかかります。宿泊代や食事代がかかる以外にも、たとえば7月下旬から9月や、2月から3月といった学生の長期休みに重なると、取得費用は高くなりがちです。
また、一発試験で取得を目指すことも可能です。受験料や試験車使用料、免許交付料の他に、取得時講習受講料をあわせて、26,450円がかかります。しかし、運転に関する知識や技術を独力で取得して受験しなくてはならないため、あまり現実的な手段とはいえません。
【ケース別】準中型免許を取得する方法
ここでは、準中型免許を取得する流れを普通免許を取得している人と、そうでない人の2通りから解説します。
普通免許を取得している場合
2007年以降で2017年の法改正よりも前に、普通免許を取得している場合には、準中型免許にするための限定解除を行います。
教習所へ通学・合宿に参加する
次のような流れです。
- 指定自動車教習所にて技能教習を受ける
- 技能審査に合格する
- 運転免許試験場で手数料を支払って限定解除する
自動車教習所で受ける時限数は、所持している免許によって、異なります。
現在所有する免許 | 技能教習 | 学科教習 | 取得日数 |
普通免許(法改正前に取得) | 8時限 | なし | 最低5日 |
普通免許AT限定(法改正前に取得) | 4時限 | なし | 最低3日 |
取得できる日数も表記してありますが、上記は予約もスムーズに入った場合です。準中型免許の取得に使う車は所持台数が少ない教習所もあるため、実際はより時間がかかることもあります。
一発試験を受ける
技能試験の予約を取ったうえで、運転免許試験場に向かい、試験を直接受ける方法です。学科試験は免除となりますが、技能試験を受ける必要があります。
- 限定解除審査申請書を作成し技能試験を予約する
- 運転免許試験場で適性試験を受ける
- 場内技能試験を受け、100点満点中70点以上を取得
- 限定解除
合否は当日中にわかるため、合格できれば1日で準中型免許へと限定解除できます。
普通免許を取得していない場合
法改正が行われた2017年3月12日以降に普通免許を取得した場合や、免許を取得していない場合は、一から準中型免許取得を目指すことになります。
教習所に通学する
取得済み免許別に、準中型免許を取得するために必要な教習を受けます。
取得済み免許 | 技能教習 | 学科教習 | 取得目安 |
免許なしまたは原付のみ | 41時限 | 27時限 | 2ヶ月~3ヶ月 |
普通免許(MT) | 13時限 | 1時限 | 14日 |
普通免許(AT限定) | 17時限 | 1時限 | 16日 |
仕事や学業と並行して進める場合は、通学が便利です。自分が教習を受けられる日程に予約を入れて、取得を目指します。取得までの流れは、次の通りです。
- 入校手続きと適性検査を受ける
- 学科教習と第1段階の技能教習を受ける
- 修了検定に合格する
- 仮免許学科試験に合格し仮免許を取得
- 第2段階の技能教習・学科教習を受ける
- 卒業検定を受け合格する
- 運転免許センターで学科試験を受ける
- 免許証交付
普通免許を取得済みの場合は、学科試験が免除されます。
合宿免許に参加する
教習所に泊まり込んで免許取得を目指す方法です。免許を持っていない人や原付免許のみの人でも、最短18日間で準中型免許取得を目指せます。合宿免許中は他の予定を入れられませんが、集中して教習を受けられる他、他の受講者と重ならない時間帯に技能教習を受けることで、期間をより短縮できるのがメリットです。
流れや教習の時限数は、通学の場合と変わりません。できるだけ早く免許取得を目指したい方は、合宿免許への参加を考えてみましょう。
一発試験を受ける
運転免許試験場で試験を受け、自力での免許取得を目指す方法です。
法改正が行われた2017年3月12日以降に普通免許を取得している人は、学科試験が免除となり、技能試験と適性試験を受け、合格できれば取得時講習を受けてから、免許が渡されます。普通免許を所持していない場合は、技能試験と学科試験が共に必要です。
運転技術を試される場であり、通常は41時限分の技能教習を受けることで免除される試験のため、難易度は高く設定されています。私有地や路上、非公認自動車教習所で適切に練習を受けられる時間があり、かつ、学科試験のための勉強を行える人ならば、合格を目指せる可能性があります。
準中型免許の取得費用をおさえる方法
教育訓練給付金制度を利用する
教習所の入学金と受講料に対し、最大で20%が給付される制度です。給付の上限は10万円までと決まっています。たとえば30万円の合宿免許なら、制度が適用されれば最大で6万円給付されるため、取得費用を抑えて準中型免許を取得できます。
雇用保険を活用した給付制度であり、初めて制度を使う人は通算で1年以上雇用保険に加入していることが条件です。また、離職した場合でも、受講開始日まで1年以内であれば対象となります。注意点として、雇用保険の被保険者であることが条件となるため、個人事業主や公務員は対象となりません。
また、準中型免許の取得を推進したい法人側には、人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)を使うという手があります。これは自動車教習所に通う費用と教習期間中の賃金の一部が助成される制度です。
キャンペーンや複数割引を利用する
教習所によっては、入校時にキャンペーンが開催されていたり、準中型免許の取得にあわせて他の免許を取得したりすると、取得費用が割引されることがあります。たとえば、準中型免許と普通二輪免許を同時に申し込むと、通常料金よりも割引が受けられるといった内容です。
普通免許を取得した卒業生に対し、準中型免許の取得を目指す際の費用を割引している教習所もあります。すでに普通免許を取得している人は同じ教習所を使うのも手です。
閑散期に入校する
自動車教習所は、学生の長期休みに重なる時期が繁忙期となります。つまり2月から3月や7月から8月など時期です。
繁忙期は募集しなくても入校者が多く集まりますが、閑散期は入校者があまり来ません。そこで、閑散期こそ割引をして入校者を集めようとする教習所が多いです。キャンペーンや割引内容は教習所によってまちまちですが、人が少ないからこそ教習の予約も取りやすいといったメリットがあります。
準中型免許の取得費用は節約できる
準中型免許の取得費用は、普通免許の取得が法改正が行われた2017年3月12日以前か以降か、そして普通免許を取得しているかどうかで変わります。
法改正前に普通免許を取得している人は、7万円から12万円が目安です。一発試験を受ける場合は手数料を含めて2,850円と安くできますが、技能試験に合格できなければ再試験のたびに費用がかかり、結果として高くなる可能性があります。
法改正後に普通免許を取得した人は、15万円から20万円が目安です。免許なしの段階から始める場合は通学であれば40万円前後、合宿免許は35万円から40万円かかります。教習所によっても異なるため、詳細は近くの教習所で確かめましょう。
また、取得費用をおさえるには、教育訓練給付金やキャンペーン、割引を使う他、閑散期を狙って入学するといった方法が挙げられます。本記事で紹介した情報も参考にして、準中型免許の取得を目指してください。