警察庁交通局運転免許課の「運転免許統計 令和3年度版」によると、令和3年の運転免許試験合格率が77.1%だったことがわかっています。過去5年間の合格率は、平均で76.3%です。
年別 | 合格率 |
平成29年 | 75.7% |
平成30年 | 75.9% |
令和元年 | 75.1% |
令和2年 | 77.7% |
令和3年 | 77.1% |
※出典元:警察庁交通局運転免許課の「運転免許統計 令和3年度版」
毎年75%以上の合格者がいる一方で、25%程度の人は不合格になっています。学科試験を目前に控えている人の中には、「落ちたらどうしよう」と不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
最初にお伝えしておくと、学科試験に不合格になっても何度も受けられます。しかし、再受験すると時間も費用もかかるため、一発合格を目指しましょう。この記事では試験に不安がある人や不合格になった人に向けて、試験対策のポイントを解説します。
学科試験に落ちたときの流れと費用
学科試験には一発合格するのが望ましいですが、残念ながら不合格になることもあります。不合格になっても再受験できるため、次こそは合格を目指して対策しましょう。万が一不合格になった場合、再受験する流れや費用を把握しておくと慌てずに済みます。
ここでは、学科試験に不合格になりやすい人の特徴と再受験の流れや費用を解説します。
学科試験に落ちる人の特徴
学科試験に不合格になった人の中には、そもそも勉強時間が足りなかった人もいます。しかし、しっかりと勉強したにも関わらず、不合格になってしまった人も少なくありません。
不合格になる人の特徴は単に勉強不足というよりも、試験の出題傾向に慣れていたか否かの違いが大きいです。試験問題は、テキスト問題90問とイラスト問題5問の合わせて95問から構成されています。
配点はテキスト問題が1問1点、イラスト問題が1問2点の100点満点です。合格基準は90点以上なので、テキスト問題を10問以上間違えると不合格になります。さらに試験時間は50分に限られるため、1問あたり1分以内で解き終える必要があります。
そのため、正確かつスピード感をもって問題を進めなければなりません。問題数に対する制限時間を事前に把握しておけば、時間が足りずに合格点に達しなかったという事態は防ぐことが可能です。
また、テキスト問題のボリュームは1~2文程度で、〇か×のいずれかで解答する二者択一形式です。テキスト問題では、次のジャンルからランダムに出題されます。
- 歩行者と運転者に共通の心得
- 自動車を運転する前の心得
- 自動車の運転の方法
- 危険な場所などでの運転
- 高速道路での走行
- 二輪車の運転の方法
- 交通事故・故障・災害などの時
- 自動車所有者・使用者・安全運転管理者・自動車運転代行業者などの心得
※出典元:警察庁交通局運転免許課「学科試験の出題形式、出題範囲及び出題基準等について(通達)」
免許取得後に車を運転する上で、上記ジャンルの内容はすべて理解しておく必要があります。しかし、試験では出題されやすいジャンルの内容も存在します。出題傾向を把握しておけば重点的に勉強できるため、本番までに傾向に慣れておくことが大切です。
なお、出題されやすいジャンルについては、「学科試験の勉強のコツ」で詳しく解説します。
次はいつ本免学科試験を受けられる?
学科試験に不合格になっても、合格するまで何度でもチャレンジできます。しかし、午後の部が設けられている会場の場合でも、当日に再受験できません。再受験できるのは、不合格になった翌日以降の平日です。
たとえば金曜日の試験で不合格になった場合、次の月曜日には再受験できます。再受験する際の流れは、次の通りです。
- 試験日の決定
- 当日試験会場で受付
- 試験手数料の支払い
- 受験票を受け取る
- 会場で試験の受け方や注意事項の説明を受ける
- 学科試験開始
- 学科試験終了
- 合格発表
基本的な流れは最初の受験時とほとんど変わりませんが、再受験では適性検査が免除されます。また、試験には、本籍が記載されている住民票や教習所の卒業証明書などが必要です。不合格になると住民票は返却されるため、再取得は不要です。
教習所の卒業証明書には、1年間の有効期限があります。期限切れになる前に合格しないと、再度教習所に通い直さなければならないので注意しましょう。
再試験を受けるための費用
学科試験は合格するまで何度でも受験できますが、その都度費用がかかります。受験するためには、毎回試験手数料が必要だからです。金額は地域によって異なるケースもありますが、1,750円のケースがほとんどです。
また、地域によっては、受験できる会場が1箇所しかないところもあります。自宅から会場までの距離が遠方の場合は、再試験の都度交通費も必要です。
学科試験の勉強のコツ
ここからは、学科試験の勉強のコツを解説します。学科試験ではひっかけ問題も多いため、文章は焦らずしっかりと読むことが大切です。勉強のコツを押さえて、試験の合格を目指しましょう。
出題されやすいジャンルは覚える
学科試験では、出題されやすいジャンルが存在します。特に出題されやすいジャンルと例題は、次の通りです。
ジャンル | 例題 | 解答 |
高速道路に関する内容 | 高速自動車国道における大型貨物自動車の最高速度は80kmである。 | 〇 |
基本的な標識表示 | 「停」の標識がある場所では、車は停止線の直前で一時停止しなければならない。 | × |
車の種類 | 普通二輪免許を受けている者は小型特殊自動車を運転することができる。 | 〇 |
追い越し・追い抜きに関する内容 | 追い越されるときには、後ろの車よりスピードをあげて追い越されないようにしてもよい。 | × |
積載について | 自動車の積載重量の制限は、その車の最大積載量の10分の1増しまで許可なく積んでよい。 | × |
駐停車禁止 | 交差点の手前から30m以内の場所は駐車も停車も禁止されている。 | × |
大型貨物自動車とは、総重量が11トン以上の自動車です。マイクロバスや大型バスは、大型「乗用車」に分類されます。大型貨物自動車の場合、高速道路での最高速度は100kmです。
「停」の標識は、一時停止ではなく「停車可」を意味しています。小型特殊自動車は、教習所に通わなくても取得できます。普通自動車や普通二輪車などのほかの免許を保有している場合、小型特殊自動車の運転が可能です。
後続車が追い越そうとしているときには、スピードを上げてはいけません。積載量の上限は車の種類ごとに決められているため、10分の1でも超えてはいけません。交差点の手前で駐停車が禁止されているのは、5m以内です。
効果測定の問題に慣れておく
教習所では、仮免学科試験の前に効果測定と呼ばれる模擬試験がおこなわれます。効果測定は、学科教習の第一段階をすべて修了しないと受験できません。出題される問題には運転に必要な基礎知識が含まれているため、本免学科試験対策につながります。
効果測定は〇か×のいずれかで解答する二者択一形式で、本免学科試験と同じ出題形式です。問題数は全50問で、30分の制限時間が設けられています。効果測定で間違えた問題をメモしておけば、苦手分野の把握や克服が期待できます。
また、効果測定では、本免学科試験に実際に出題された問題が用いられるケースも多く見られます。本番と似たような感覚で試験に臨めるため、出題傾向や問題の言い回しなどに慣れておきましょう。
ひっかけ問題に騙されない
学科試験では、問題文の内容にミスリードを誘うようなひっかけ問題が一定の頻度で出題されます。本番で惑わされないようにするためにも、問題はしっかりと読むことが大切です。ここからは、過去に実際に出題されたひっかけ問題と解答を紹介します。
進路変更の合図の時期「30m?」「3秒?」
問題例は、「同一方向に進行しながら進路変更する場合の合図の時期は、その行為をする30m手前に達したときである。」です。解答は、「×」です。
同一方向に進行しながら進路変更する場合、3秒前に知らせなければなりません。進路変更では距離のタイミングで知らせるルールはないため、間違えないように注意しましょう。30m手前で知らせるのは、右折・左折・回転のときです。
「信号の直前」「交差点の直前」
問題例は、「信号のある交差点で停止線がない場合の停止位置は、信号の直前である。」です。解答は、「×」です。
優先される停止位置は、停止線、交差点の順になります。そのため、信号のある交差点で停止線がない場合、停止線の直前で停止する必要があります。停止線がない交差点では、信号や一時停止の標識があっても停止位置は交差点の直前です。
積載できる荷物の高さはどこから測る?
問題例は、「二輪車で荷台に荷物を積むときの制限は積載装置から2メートル以内である。」です。解答は、「×」です。
積載の高さは、地面からの距離で測ります。問題では「積載装置から2m以内」と記載されているため、誤りです。このような問題では数字だけに惑わされず、測る場所にも注視しましょう。
コミュニケーションの一環として警音器を鳴らしてもOK?
問題例は、「前の車が発進しないため、警音器を鳴らして発進を促した。」です。解答は、「×」です。
警音器は、みだりに鳴らしてはいけません。鳴らすことが認められているのは、次の場所に限られます。
- 警音器を鳴らすよう促す標識がある場所
- 法令によって決められた場所
- 危険を回避するためにやむを得ない場合
警音器は、コミュニケーション手段のひとつとして搭載されているわけではありません。このことを十分に理解し、運転免許取得後も不適切に使用しないよう心掛けましょう。
緊急自動車が近づいたときには一時停止が必要?
問題例は、「交差点やその付近以外の場所で緊急自動車が近づいてきたときは、道路の左に寄って一時停止しなければならない。」解答は、「×」です。
交差点やその付近以外の場所で緊急自動車が近づいてきたときには、左に寄せて道を譲るのが正解になります。ただし、交差点や「その付近」の場所では、交差点を避けて一時停止する必要があります。
学科試験に落ちないためのポイント
最後に、学科試験に不合格にならないためのポイントを解説します。しっかりと試験対策をしていても、受験者のミスで受験すらできない事態に陥る可能性もあります。受験当日は、試験以外も万全な体制で臨みましょう。
必要な持ち物はリストにして事前に準備
学科試験は、受付時間内に行けば必ず受験できるわけではありません。必要な持ち物もあるため、当日までに準備して忘れないようにしましょう。試験で必要な持ち物は、次の通りです。
- 本籍が記載されている住民票
- 健康保険証など本人確認書類
- 免許証に使用する証明写真(合格した場合)
- 教習所の卒業証明書など各種証明書
- 試験手数料
- 免許証交付手数料(合格した場合)
- 運転免許申請書
- 在留カードまたは特別永住者証明書等(外国製の場合)
- 筆記用具
試験当日までには、本籍が記載されている住民票が必要です。住民票は、市区町村の窓口やコンビニ交付サービスなどで取得できます。手数料は市区町村や取得方法によって異なりますが、1通につき350円程度です。
見事合格に至ると、免許証に使用する証明写真や免許証交付手数料が必要になります。会場で撮影できるケースも多いですが、自身が納得できる写真を希望する場合は、事前に準備しておきましょう。
時間に余裕をもって試験会場に到着する
まずは、試験当日の流れを確認しておきましょう。
- 当日試験会場で受付
- 試験手数料の支払い
- 適性検査
- 受験票を受け取る
- 会場で試験の受け方や注意事項の説明を受ける
- 学科試験開始
- 学科試験終了
- 合格発表
- 写真撮影
- 免許証の交付
受付時間は会場によって異なりますが、8:30~9:00頃までが多いようです。試験当日は、交通渋滞や受験者の混雑なども想定されます。受験者が多いと受付終了時間を早める
会場もあるため、当日は時間に余裕をもって到着するようにしましょう。
学科試験の前には適性検査があり、間に合わなければ受験できないので注意が必要です。受験できる会場は限られており、居住する地域によっては遠方の場合も考えられます。事前に交通手段や時刻表などを確認し、スムーズに到着できるよう心掛けることが大切です。
焦らずに問題文をしっかり読んでから解答する
「学科試験の勉強のコツ」でも解説した通り、学科試験のテキスト問題ではミスリードを誘う文章が盛り込まれています。焦ると解答を誤る可能性があるため、問題文は落ち着いて読むようにしましょう。
読み間違いしやすい内容は、次の通りです。
- 青色「灯火」の信号・赤色「点滅」の信号・黄色「矢印」の信号
- 「3秒前」と「30m手前」
- 「3m以内」と「5m」以内
- 「~である」と「~でない」
- 「~できる」と「~できない」 など
また、テキスト問題では、「必ず」や「絶対」などの強く言い切る文章が含まれていることがあります。このような問題では、例外の有無がポイントになります。問題例と解答は、次の通りです。
問題例 | 解答 |
車を運転するときは、どんなときでも必ずシートベルトを着用しなければならない。 | × |
運転中、歩行者のそばを通るときには、必ず一時停止をしなければならない。 | × |
車を運転中、急ブレーキは絶対にしてはいけない。 | × |
運転中は、後部座席を含めてシートベルトの着用が義務づけられています。しかし、後退する際や妊婦などの一部のケースでは、着用が免除されています。運転中に歩行者のそばを通る場合、必ず一時停止する必要はありません。
徐行もしくは一時停止が正解です。運転中に何らかの危険を回避する場合、急ブレーキの使用が認められています。
学科試験では試験以外の準備も大切
学科試験に不合格になっても、卒業証明書の有効期限内であれば何度でもチャレンジできます。しかし、受験のたびに時間や費用もかかるため、一発合格を目指したいところ。試験は過去問や効果測定を活用すれば、十分に対策できます。
最近では、下記のように学科試験対策に特化したオンライン学習教材も登場しています。パソコンだけでなくスマホやタブレットに対応しているものもあり、通勤や通学などの隙間時間を試験対策に充てることも可能です。
また、当日必要な物を忘れたり遅刻したりすると、試験自体を受けられなくなります。
合格を目指すには試験対策も必要ですが、試験以外の準備もしっかりとしておきましょう。