運転免許を取るために自動車教習所に入ると、ほとんどの場合は最初に適性検査を受けることになります。適性検査はドライバーとしての適性や性格を調べるためのテストですが、受ける前にはテストの内容への疑問やテストの結果が悪い場合への不安を感じることもあるでしょう。
適性検査そのものがどういうものかを把握しておくことで、こうした不安が軽減されます。この記事では、運転免許を取る過程で受けることになる、適性検査について解説します。
適性検査の種類や問題の内容、結果からわかる物事について知識を深め、疑問や不安を解消していきましょう。
目次
運転免許の適性検査とは?種類と問題内容
運転免許の取得過程で実施される適性検査は、受験者の自動車運転に対する適性を確認することを目的としています。
受験者の性格や行動の傾向をチェックし、実際の自動車運転に現れる操作の素早さや正確さ、クセを客観的に知るための参考材料としています。検査で得られた結果は教習所の教官や受験者に共有され、ドライバー自身の心構えの材料になります。
運転に向いているか、向いていないかという基準を図る検査だと思われがちで、学科や技能と同じような「合否のある試験」と勘違いされることは少なくありませんが、適性検査はあくまで検査です。この結果によって運転免許を取得できないということはないため、これから受験するという方は安心してください。
日本で主流となっている適性検査には2種類あり、一つは警視庁方式K型、もう一つはOD式安全テストと呼ばれています。どちらの適性検査が使用されるかどうかは教習所によって異なり、自分で選べる場合もあります。選ぶ場合には自分の知りたい内容に即した検査を選択しましょう。両方の検査の性質や問題内容を把握しておきましょう。
警察庁方式K型
警察庁方式K型は心理テストのような形式で受ける適性検査です。公安委員会指定の教習所で用いられてきた実績のある検査で、次の11個の判定項目に分かれています。
- 状況判断力
- 動作の正確性
- 動作の速さ
- 衝動抑止性
- 神経質傾向
- 気分の変わりやすさ
- 上っ調子になりやすさ
- 自己主張の強さ
- 協調性
- 自分をよく見せる傾向
- 情緒安定性
これらの項目から性格分析をおこない、総合的な判定が下されます。判定によって慎重な気質や前のめりな気質であることがわかり、事故の起こしやすさやスムーズな運転への適性などが明らかになります。
慎重すぎると状況判断が遅いタイプ、前のめり過ぎると動作が速い代わりに慣れとともに雑な運転をしてしまうタイプなど、運転時に発揮される能力などを知る参考として使用されます。
警察庁方式K型の問題内容
警察庁方式K型では、全部で7つの検査問題を受けることになります。検査1から6は運転行動を判定するマークシート式で、検査7は性格を診断するための2択形式です。
検査全体の所要時間はおよそ30分ほどです。焦らずに解答をおこなっていきましょう。
OD式安全テスト
OD式安全テストは民間企業で開発された運転免許の適性検査です。心理学に基づいて設計されており、自動車教習所や自動車を業務に使用する企業で採用されています。
運動機能、健康度と成熟度、性格特性、運転マナーの4つの項目から運転の適性度と安全運転度を判定する仕組みとなっています。安全運転能力の高低と運転適性の高低を組み合わせ、全4タイプのドライバー適性を表します。
OD式安全テストの判定項目は以下の通りです。
- 注意力
- 判断力
- 安定性
- 適応性
- 情緒不安定性
- 自己中心度
- 神経質・過敏性
テスト結果では安全運転度と運転適性度が両方ともに高度であれば安全運転タイプ、安全運転度が高くとも運転適性度が低い場合にはもらい事故タイプなど、その人のドライバーとしての特性を端的に表現します。
OD式安全テストの問題内容
最後の問題以外では、「はい」または「いいえ」で回答をおこなう2択問題が用意されています。マークシート形式で、心理テストに近い感覚で問題に答えられるようになっています。
最後の問題では読み上げられた質問文に対し、筆記で答えを記入していきます。質問から思いついた答えを正直に回答することでより正確な結果を得られます。自分を優秀に見せたりするようなことはせず、素直な心持ちで検査を受けることが大切です。
運転免許の適性検査の結果でわかること
運転免許の適性検査は運転免許の試験結果などには直接関係しませんが、自動車のドライバーになるうえで把握しておきたい情報を知ることができます。
2種類の適性検査でわかることも異なるため、それぞれの特徴も把握しておきましょう。
運転免許の適性検査には合格と不合格がない
運転免許の適性検査は、運転の適性を判断するもので試験ではありません。そのため合格や不合格はなく、あくまで教習側の参考やドライバー自身が心掛けておくための情報がわかるものになっています。
検査結果ではさまざまな理由で「事故を起こしやすい」と評価されますが、これはドライバーが真面目に自動車運転に向き合うためのものです。自動車は速いスピードを出すことのできる大きな物体であるため、「自分が事故を起こすとしたらどういう状況か?」という傾向を理解し、日頃から対処することが適性検査の意義ともいえます。
試験の合否に影響はないため、取り繕った回答をする必要はありません。正直に回答し、自分の適性を見つめてみましょう。
警察庁方式K型では運転傾向がわかる
警察庁方式K型では、実際に運転をおこなう際に表れやすい運転傾向を知ることができます。テストの結果では以下の6タイプから運転傾向が判定されます。
- 状況判断が遅い人かどうか
- 動作は速いが正確さに欠ける人かどうか
- 神経質傾向にある人かどうか
- 攻撃的な傾向のある人かどうか
- 気分の起伏が激しい人かどうか
- 自己中心傾向のある人かどうか
一覧にしてみるとわかるように、比較的ネガティブな基準が用意されています。テストの結果が出たら、これらの傾向が原因となって事故を起こす可能性がないかどうかを自分に問いかけてみましょう。
OD式安全テストでは運転適性と安全運転度がわかる
OD式安全テストは運転適性度と安全運転度から、ドライバーを4種類のタイプに分類します。以下の表でそれぞれのタイプを確認しましょう。
安全運転度が高い | 安全運転度が低い | |
運転適性度が高い | 安全運転タイプ | 重大事故タイプ |
運転適性度が低い | もらい事故タイプ | 事故違反多発タイプ |
安全運転タイプ以外は安全運転度、あるいは運転適性度の低さを原因に事故を起こす可能性が提示されます。運転をするときはこれらの結果を意識しましょう。
警察庁方式K型と同様にネガティブなものが散見されますが、これを参考に正しい運転を心掛けることがもっとも大切です。
運転免許の適性検査を受けるときのポイント
適性検査はドライバーとして心構えておきたいことを知るきっかけになります。その特性をしっかり活かすためには受験者が正しい選択をする必要があります。 適性検査を受けるときは以下の4つのポイントを意識しましょう。
- 自分の状況に応じて適性検査を選ぶ
- 試験ではないので正直に答える
- 焦らずにゆっくり答える
- 検査員の説明をしっかり聞いて受ける
それぞれのポイントを順番に解説していきます。
自分の状況に応じて適性検査を選ぶ
適性検査とひとくちに表現しても警視庁方式K型とOD式安全テストではそれぞれ得意分野が異なります。検査の結果でわかる内容も、先ほど紹介したように違う分野での表現となっているため、適性検査の種類を選べる場合には自分の状況・目的に合った適性検査を選ぶようにしましょう。
例えば、「自分が自動車に乗ったときはどのような動きをするのだろう」「自分の運転はなにが危ないのだろう」ということが知りたいときには、運転傾向を知ることのできる警察庁方式K型を選ぶことをおすすめします。反対に、「自分は運転が上手い性質の人間か?」「自分の運転は安全か?」といったことを知りたいならOD式安全テストを選ぶと良いでしょう。
試験ではないので正直に答える
適性検査には正直に答え、自分の考え方以外のことを回答に反映させないようにしましょう。
適性検査はあくまで検査であり、運転免許の取得や自動車教習所への入校、教習所での試験といったものとは性質が異なります。ドライバーとしての自分を客観的に見つめ直すための検査であるため、正直に答えないと正確な判定がされません。全ての問題に正直に回答することで、適性検査を有効に活用できます。
焦らずにゆっくり答える
適性検査には制限時間がありますが、ゆっくり答えることが大切です。制限時間はドライバーとしての動作のスピードや正確さを測るためのものであり、無理に急ぐ必要はありません。時間を優先して投げやりに回答した適性検査では、正確な判定が難しくなる場合があります。焦らずゆっくりと、自然体で答えるようにしましょう。
検査員の説明をしっかり聞いて受ける
検査にあたっては、事前におこなわれる検査員の説明をしっかりと聞きましょう。
適性検査の検査内容はそこまで難しくはありませんが、なかには複雑なものも存在しています。解答の順番や誤答の訂正方法についても決まりが存在しているケースもあり、正確な検査を受けるためにも検査員の説明にしっかりと耳を傾けてから、検査の問題に取り組むようにしましょう。
運転免許の適性検査を受けたあとの注意点
適性検査を受けたあとにも意識しておきたい点はいくつかあります。以下の2つの注意点を事前に把握しておき、試験後に想定と違うような事態になることを防ぎましょう。
- 結果はその場ですぐにわからない
- 再検査になる可能性がある
注意点を順番に見ていきましょう。
結果はその場で直ぐにわからない
「テストの結果を早く知りたい!」と思っても、適性検査の結果をその場で知ることはできません。答案と答え合わせをおこなうタイプのテストとは異なり、適性検査の結果がでるまでには2日以上の時間がかかることがほとんどです。試験を受けたその場で結果がわかるわけではないため、あらかじめ把握しておきましょう。
OD式安全テストの場合、検査の回答を業者に送付してから返ってくるまでの時間がかかり、2週間ほど時間がかかったというケースもあります。焦らずに返送を待ちましょう。
再検査になる可能性がある
適性結果の結果次第では再検査を求められる場合があります。しかし、この結果を過剰に深刻に捉えることは避けるようにしましょう。適性検査はあくまで検査であり試験とは異なります。再検査が必要とされるのは、回答方法に問題があって正確な結果が出ていないということが理由の場合もあれば、現在の考え方や意識で自動車に乗ることが危険であることを意識するためにおこなわれることもあります。
再検査になったからといって免許を取得できなくなったり、免許をはく奪されたり、教習所に通えなくなったりするわけではありません。
再検査する場合は判定が低かったところを見直す
再検査の対象となった場合には、判定が低かった項目を重点的に見直すようにしましょう。「どうしてこの考え方ではダメなのか」「この考え方がどうして自動車の運転において危険になるのか」と考えてみることが大切です。検査結果のコメントなどから問題点が参照できる場合もあるため、受け取った書類は自分の答案含め一通り目を通してみましょう。
判定が低かった項目に対する意識や心掛けを再度持ちなおすことで、自分の弱点を改善することができます。
このように自分の弱点を意識し、改善を促すことも適性検査の役割の一つです。「自分は自動車の運転に向いていないのでは?」と思い詰めず、こなすべき課題として自分の性格や傾向を見つめ直してみましょう。こうした課題を意識的に乗り越えることで、検査前よりも安全に運転できる状態になるはずです。
運転免許の適性検査でよくある疑問
この項目では運転免許の適性検査で頻出する疑問点をQ&A方式でピックアップしました。順番にそれぞれの疑問点を見ていきましょう。
教習を受けられなくなる適性検査がある?
適正検査のなかには教習の実施に影響を与えるものもあります。 自動車教習所に入る際には、入所時適正検査として視力検査、色彩検査、対話能力の検査といった項目が測られ、その水準を満たしている必要があります。求められる水準は高いものではありませんが、これを満たすことができない場合は自動車の運転をおこなうことが難しいと判断されます。
これまで運転免許の適性検査について解説してきましたが、これらは主に警察庁方式K型やOD式安全テストといった、運転免許に必須でない分野についての検査でした。自動車運転は誰でもできるものではないため、他にも測られる適性は存在しています。
2022年現在の自動車では、たとえば一定の視力を満たしていない人が矯正器具をつかわずに公道で自動車を運転することが難しいように、入所時適性検査をクリアできないと自動車運転の教習を受けることができない場合があります。
既に免許を持っている人も適性検査を受けられる?
自動車免許を持っている人でも適性検査を受けることは可能です。運転免許センターなどで検査を受けることができる場合があるため、住んでいる地域のセンターに確認してみましょう。
運転免許の適性検査を受けて優良ドライバーを目指そう
運転免許の適性検査は学科や技能試験とは違い、運転免許の取得には直接関係しないテストです。しかし自分がドライバーとしてどのような意識を持てば良いのかを客観的な視点から指摘してくれるものであり、安全運転をするためには重要な検査です。
適性検査には警察庁方式K型とOD式安全テストの2種類があり、前者は自動車を運転する想定での運転傾向を、後者は運転適性度(自動車運転に向いている性格かどうか)や安全運転度を知ることができます。自分が知りたい内容に即した種類の適性検査を受けましょう。
適性検査を受けるときにはリラックスをして、正直に答えるようにしましょう。あくまでも試験ではなく検査なので、正直に答えることが重要です。適性検査の結果から自分を振り返り、優良ドライバーを目指しましょう。