中型免許(中型自動車第一種免許)は教習所に通所せず一発試験で取得することが可能です。とはいえ、「教習所に通うよりお金がかからないのか?」「合格しやすいのか?」など気になる点が多いのではないでしょうか。
本記事では、中型免許を一発試験で取得したいと考えている人に向けて、基礎知識や一発試験のメリットやデメリットについて解説していきます。一発試験に向いている人の傾向や合格のコツもあわせて紹介するため、受験を考えている人はぜひご覧ください。
目次
中型免許の正式名称は「中型自動車第一種免許」
まずは、中型免許とは具体的に何を指しているのか、そしてどのような車が運転できるのかを知りましょう。免許を取得して乗りたい車が中型自動車第一種免許に対応するかどうかは、あらかじめ確認しておくことは大切です。
中型免許とは、正式名称を中型自動車第一種免許といい、4tトラックやマイクロバスなどの中型自動車にあたる車の運転を許可する免許です。2004年に道路交通法が一部改正されたことで誕生しました。、道路交通法上では車両総重量7,500キログラム以上11,000キログラム未満、最大積載量4,500キログラム以上6,500キログラム未満または乗車定員11人以上29人以下であるものと定義されています。
ちなみに、オートバイの免許の話題でしばしば用いられる中型免許はあくまで通称であり、正式には普通二輪免許と呼ばれています。中型自動車の免許である中型免許と混同しないようにしましょう。
中型免許の一発試験とは?
一発試験とは、運転試験場(または免許センター)で受けられる運転免許の試験です。中型免許には仮免許試験と本免許試験があり、それぞれ適性検査と技能試験を受けることになります。
まずは仮免許試験と適性検査を受け、それに通過しなければなりません。仮免許試験のあとには5日以上の路上練習をおこない、そのあとに本免許試験を受けることになります。本免許試験合格後に取得者講習を受けることで、中型免許が交付されます。
一発試験は自動車教習所に通わなくて済むため、短期間かつ費用をおさえて中型免許を取得することができますが、そのぶん試験の難易度は高く文字通りの一発で合格することは簡単とは言えません。
中型免許の取得条件
中型免許には第一種免許と第二種免許の二種類が存在しており、それぞれ取得の条件が異なります。それぞれの詳細についても把握しておきましょう。
中型自動車第一種免許の取得条件
中型免許の第一種免許は、正式には中型自動車第一種免許といいます。一般的な言葉としての中型免許が指すものはこちらになっており、4tトラックなどの中型自動車を運転するために求められます。
取得条件は次の通りです。
- 普通免許、準中型免許、大型特殊免許のいずれかの取得
- 通算2年以上の運転経験(免許停止期間を除く)
- 両眼0.8以上、左右とも0.5以上の視力
- 深視力検査、聴力、色彩識別テストに合格
普通免許とは違い、他の自動車免許と運転経験が求められることが特徴的と言えます。このため、中型免許の取得には最低20歳以上という年齢制限が設けられています。
また、免許取り消し処分のため欠格期間(運転免許の再取得ができない期間のこと。最短1年、最長10年)である人や、免許停止や免許保留の処分を受けている人も、中型免許の試験を受けられません。
中型自動車第二種免許の取得条件
中型免許の第二種免許は、正式には中型自動車第二種免許といいます。第一種免許と同様の車両を対象としていますが、二種免許を持っていれば旅客を乗せた商業目的での運転が可能です。対象となるのは29人以下までのマイクロバスなどの旅客目的運転で、より大型の路線バスや観光バスなどを運転するには大型二種免許(大型自動車第二種免許)が必要です。
顧客を乗せて運転するという性質上、その取得条件は第一種免許よりも厳しいものとなっています。条件は次のとおりです。
- 普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許、大型特殊免許のいずれか第一種免許の取得
- 上記の運転免許を取得してから通算3年以上の運転歴
- または他の第二種免許を取得している
最低でも21歳以上の人が取得できる免許であり、第一種免許と同様に欠格期間中の人や、免許停止・保留中の人は試験を受けられません。
中型免許の一発試験の合格率
中型免許の一発試験は難しいとされていますが、技能試験における合格率の平均は41%(平成19~27年までのデータ。年度により異なる)となっています。一人当たりの平均受験回数は2.6回です。
※参考:運転免許統計(警察庁)
普通免許の一発試験の合格率が10%であるため高い数値に見えますが、中型免許の取得には自動車免許の取得や運転の経験が比較的豊富な人が多いためであると言えます。
中型免許の一発試験における技能試験は、減点方式で100点中60点を獲得できれば合格です。平均的な合格率や受験回数を考えたうえで、自分の技術でこの条件を突破できるかどうかを考えてみましょう。
中型免許を一発試験で取得するメリット・デメリット
中型免許の一発試験に挑むまえに、まずはそのメリットとデメリットを把握しておきましょう。
一発試験のメリット
中型免許の取得を一発試験で目指すおもなメリットは次の通りです。
- 教習所に通う時間と手間が省ける
- 順調に進めば費用を抑えられる
- 8t限定中型免許なら2,850円で限定解除できる
- 中型免許を取ることで仕事の幅が広がる
それぞれのメリットについて順番に見ていきましょう。
教習所に通う時間と手間が省ける
自動車教習所に通うに教習を受ける時間や通学にかかる時間・労力など手間がかかりますが、一発試験では省くことができます。
合宿免許などを利用すれば比較的短期間で教習所を卒業できますが、その場合は仕事やプライベートのスケジュールにも少なからず影響が出ることになるでしょう。また、自動車教習所は年度末や夏季は繫忙期となっているため、時期によっては混雑して予約を取りにくいなどの手間の問題もあります。
一方で自分のタイミングで受験をすることができる一派試験には、時間と手間の面において大きなメリットがあると言えます。
順調に進めば費用を抑えられる
一般的には、免許の取得費用は自動車教習所に通うぶんも込みで考えられていますが、一発試験を順調に通過することができれば費用を大幅におさえられます。
順調に進むことが条件であるため、このメリットを得られるかどうかはその人の環境や技術力によりますが、教習所の費用は決して安くはないためとても魅力的な要素といえるでしょう。
8t限定中型免許なら2,850円で限定解除できる
中型免許が新設されるまでは、普通免許があれば車両重量8t未満の車を運転できました。2007年6月以前に普通免許(旧普通免許)を取得した人は、免許証に中型車は中型車(8トン未満)に限るという記載がある人が該当者です。この免許を持っている人に限り、2,850円を払って限定解除をおこなうことで免許を中型免許とすることができます。
限定解除も教習所に通うことが一般的ですが、一発試験も可能です。教習所費用はAT限定免許の場合は9~14万円、MT込みの場合は7~10万円ほどの料金相場となっているため、一発試験であれば大幅に金額を浮かすことができるでしょう。
中型免許を取ることで仕事の幅が広がる
中型免許の取得によって4tトラックなどに乗ることができるようになれば、運送や土木の分野で仕事の幅が大きく広がります。教習所に通うお金がもったいない、という悩みがあっても、スムーズに一発試験を通過できれば解消できます。
試験に通過することは簡単ではありませんが、自分の生活における選択肢を増やすことのできる選択肢といえるでしょう。
一発試験のデメリット
中型免許の一発試験には次のようなデメリットも存在しています。
- 路上練習車などを手配する必要がある
- 自力で勉強しなくてはならない
- 不合格となった場合は受験費用がかさむ
- 試験を受けられる日が限定されている
ネガティブな要素も意識して、得られるメリットに見合うかどうかを考えてみましょう。それぞれのデメリットについて順番に解説します。
路上練習車などを手配する必要がある
一発試験では教習所の車を使って練習することができないため、路上練習車は自分で手配する必要があります。仮免許試験のあとには5日以上の路上練習が必須となっているため、家族や友人から中型トラックを借りられない場合は、費用をかけてレンタルしなければなりません。
自力で勉強しなくてはならない
教習所で指導を受けることができないため、自力での勉強が必要です。疑問があれば独学で正解にたどり着かなければならない、というのはとても困難な道と言えます。
身の回りに中型免許を持っている人がいれば、その人に運転を見てもらうことが最善です。
不合格となった場合は受験費用がかさむ
費用を抑えられることは一発試験のメリットですが、それはスムーズに試験を通過できた場合の話です。受験の手数料は試験を受けるたびにかかるため、受験回数が増えるほど費用はかさんでいきます。
確実に試験を通過できるだけの技術が伴っていないと、いつまでたっても合格することができません。運転に自信があっても、車両のサイズの違いで変わるポイントも大きいため、過信は禁物です。
試験を受けられる日が限定されている
一発試験の実施日は平日のみで、加えて予約制です。希望の日程で試験が受けれない場合があることに注意しましょう。
また、取得時講習は教習所で受ける必要がありますが、これは教習所によっては実施していない場合もあります。一発試験を考えている場合は、試験場や教習所の下調べも重要です。
中型免許の一発試験に向いている人と向いていない人の特徴
メリットとデメリットを総合すると、中型免許の一発試験に向いている人と、反対に向いていない人の特徴が浮かび上がってきます。自分がどちらの特徴に近い性質を持っているのか、受験を決める前に考えてみましょう。
中型免許の一発試験に向いている人
中型免許の一発試験に向いている人からは、次のような特徴が挙げられます。
- 準中型免許を持っており、仕事で2~3tトラックを運転している
- 中型トラックが借りられる
- 身近に同乗して指導してくれる人(中型免許保持者)がいる
すでに準中型免許を持っていて、仕事などでトラックの運転に慣れている人は、練習でコツを掴めさえすれば一発合格の可能性が高いと言えます。
また、10時間の路上練習をこなしてからでないと本免許試験が受けられないため、中型トラックを貸してくれる人がいるなど、路上練習しやすい環境にある人は一発試験も視野に入りやすいです。
届出教習所の路上練習プランが利用できる可能性があります。本格的な教習よりもシンプルなプランであるため、費用も抑えられます。最寄りの届出教習所に問いあわせて、利用できるかどうかを確認してみましょう。
中型免許の一発試験に向いていない人
中型免許の一発試験に向いていない人は、次のような特徴を持っていると言えます。
- 路上練習用の車両や指導員が確保できない人
- 見知らぬ検定コースで検定を受ける自信がない人
- 自力で中型車の運転について知識、技術を学ぶのが不安な人
路上練習の環境が確保できない人や、見知らぬ道で試験を受けるのが不安な人にとって、一発試験は難易度が高いでしょう。この場合は自動車教習所に通って中型免許試験を受けるのがおすすめです。
自動車教習所には教習コースや車両、指導員、カリキュラムなど運転を学びやすい環境が整えられているため、より確実に技術を身に着け、免許取得につなげることができます。一発試験では慣れないコースを使うことになりますが、教習所であれば普段の技能練習で慣れた教習コースで技能試験を受けられます。この試験に合格すれば運転免許試験場での技能試験も免除されるため、難易度は低くなるといえるでしょう。
中型免許の一発試験の費用
中型免許の一発試験は教習所よりも安く免許を取得できる可能性がありますが、具体的にはどれほどの費用となるのでしょうか。
費用の項目は大きく分けて、仮免許試験と本免許試験、取得時講習の3つです。
仮免許試験費用の合計 | 本免許試験費用の合計 | 取得時講習費用 |
5,500円 | 8,650円 | 17,800円~22,000円 |
費用は合計で合計で31,950〜36,150円かかることになります。また、路上練習のために車両をレンタルする場合は、練習のたびに2〜4万円がかかるため、家族などから車両を借りられない人はより多く必要を見積もりましょう。
一発試験の費用内訳
次に、各費用の内訳について見ていきましょう。
仮免許試験費用の内訳
仮免許試験費用の合計額5,500円の内訳は次のとおりです。
- 受験料2,900円
- 試験車使用料1,450円
- 仮免許証交付手数料1,150円
本免許試験の内訳
本免許試験の合計額8,650円の内訳は次のとおりです。
- 受験料4,100円
- 試験車使用料2,500円
- 免許証交付手数料2,050円
取得時講習受講料は地域によって異なる
取得時講習受講料の費用項目はシンプルですが、次のとおり、他の費用にはない特別な事情が存在しています。
- 17,800円~22,000円(地域によっても異なる)
仮免許試験と本免許試験は費用に関わらず全国一律となっていますが、取得時講習費用は地域によって異なります。受験する運転免許試験場へあらかじめ確認を取ることが大切です。
自動車教習所と一発試験の費用の違い
一発試験はスムーズに合格できた際に費用を抑えられますが、自動車教習所に通って免許を取った場合と比べて、具体的にはどれほどの節約となるのでしょうか。
公安委員会指定の自動車教習所に通った場合と、一発試験で受ける場合は次のような違いがあります。
指定自動車教習所に通った場合 | 一発試験で受ける場合 |
17~24万円(普通免許を持っている場合) 21~27万円(AT限定普通免許を持っている場合) |
31,950~36,150円+路上練習の車両レンタル費、指導員への依頼料 |
一発試験の費用負担は、教習所のものと比較して安価といえるでしょう。しかし、不合格であった場合は再受験の際に受験料と試験車使用料が必要になる点に注意です。指導員をつけ力をつける手段もありますが、有償依頼の場合は依頼料が必要です。
あまりにも回数が重なると、試験費用とレンタル費用の負担が大きくなり、教習所に通所するよりも高額な費用を支払う結果になりかねません。自分の実力や練習環境を考えたうえで、一発試験を受けるかどうかを考えましょう。
中型免許の一発試験を受ける流れと必要な書類
中型免許の一発試験の流れは、大きく分けると仮免許試験と本試験の2つとなります。また、その流れにおいて必要な書類も少なくないため、受験を始める前に用意しておくようにしましょう。
試験は、運転免許試験場(または運転免許センター)で受けることができます。自分が住んでいる地域はどこで受験できるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
仮免許試験の流れ
仮免許試験は次のような順番でおこなわれます。
- 適性検査
- 仮免許技能試験
- 5日間以上の路上練習
- 仮免許の交付
適性検査では、視力、色彩識別能力、聴力、運動能力がチェックされます。視力は両眼で0.8以上、片眼で0.5以上、深視力検査3回の平均誤差が2cm以下で合格です。眼鏡・コンタクトレンズでの矯正、レーシック(視力回復手術)での矯正も認められています。
色彩識別能力は信号機に使用される赤色、青色および黄色の識別ができることが通過の条件です。張力は、補聴器なしで日常の会話を聞き取れ、10メートルの距離で90デシベルの警報器の音が聞こえれば合格です。運動能力は、身体障害がないことで通過できます。
適性検査に通過すれば仮免許技能試験を受けることになります。その後、5日10時間以上の路上練習を経て、仮免許が交付されます。
本試験の流れ
本試験は次のような順番でおこなわれます
- 適性検査
- 技能試験
- 応急救護講習、取得時講習を受ける必要がある
適性検査の後、技能試験となります。自動車教習所の試験では普段使用している教習所のコースを走行しますが、一発試験では慣れていないコースを走行しなければなりません。一発試験の難度が高く合格率が低いのは、この点が理由といえるでしょう。
試験に通過することで応急救護講習と取得時講習を受けることになりますが、次の条件に当てはまる人は取得時講習が免除となります。
- 準中型免許や普通二種免許を取得している人
- 指定自動車教習所を卒業して1年以内の人
必要な書類
中型免許の一発試験を通して必要な書類は次のとおりです。
- 運転免許証
- 仮運転免許証
- 申請用写真
- 路上練習申告書
忘れず用意しておくようにしましょう。
中型免許の一発試験に合格するコツ
中型免許のメリットを最大限に活用するためには、なるべく少ない受験回数で合格することが大切です。受験の前に合格するためのコツを把握しましょう。
法規に沿ってメリハリをつけた運転を心がける
技能試験(仮免許、本免許)では、法規に沿った走行ができているかどうかなどの意識や、メリハリがついて器用に運転をおこなえているかどうかなどの技術力が確かめられます。発進や停車時の安全確認や準備などの基本的な動作が抜けることで減点されます。乗り込み時の安全確認やルームミラーあわせはもちろん、運転時の巻き込み確認や安全確認が求められます。普段の運転では忘れがちなことも、しっかりとおこないましょう。
運転技術としては、直線では法定速度を考慮のうえで素早く加速、カーブ前では早めのブレーキをするなどのメリハリ付けが大切です。優柔不断な運転をすると減点の対象となるため注意が必要です。
普通免許を取ったときのような初心に戻り、一つひとつを丁寧におこなっていくことが合格への近道といえるでしょう。
体のコンディションをしっかり整えて臨む
仮試験と本試験ではそれぞれ適性検査をおこないますが、このときの視力が基準に満たない場合、試験は不合格になってしまいます。もともとの視力に関係のない疲れ目などの一時的な不調で受け直しとなってしまうのは避けたいものです。
試験の前日には、夜更かしや目の酷使など、もともとの視力が出にくくなるような行為を控えるようにしましょう。眼鏡やコンタクトを使用している人は、それを忘れないようにすることも重要です。
中型免許の一発試験はトラック運転経験がある人におすすめ
中型免許の一発試験に合格することで、自動車教習所に通って免許を取るときよりも、スムーズかつ安価に免許を取得することができます。中型免許があれば4tトラックなどの中型車に乗ることができるようになり、仕事の幅も広がるためとても魅力的と言えます。
しかし、自動車教習所に通う場合と違って、自分で勉強や準備をしなければならないためハードルは高いです。中型免許の一発試験は、既に準中型免許などを持っておりトラックの運転経験がある人や、中型トラックの運転の練習をしやすい環境にいる人におすすめの受験方法と言えます。確かな技術を身に着けて、より効率的に中型免許を取得しましょう。